12月17日、18日

12月17日

見かねた社長が占いを奢ってくれるという、今日がその日だ。占いというか、手のオーラのようなものを見るらしい。指定されたマンションに到着して迎えてくれた女性は凡庸な表現をすればおしゃれな人で、勝手に想像していたよりもかわいらしい印象だった。両手を見てすぐ、繊細な人ですねと言う。そして両極端ですね。霊感ありますかと聞かれたが特段感じたことはない。直感は冴えていると思うからそういう部分だろうか。身体に悪いところはないけれど、諸々を吸い込みすぎて精神がしんどくなるタイプ。結婚は…と両手の側面を見て疑問の声を漏らすので恐ろしかった。いやしたんですけど、3ヶ月で離婚したんです、と伝えると、ですよねえと。結婚するときにははっきりとそういったものが見えるらしい。今の私には見えないらしい。でも今世結婚するって決めて生まれてきてるから、しますよ。出会います。えーもうしたくないな、と思いながらどんな人だろうとぼんやり考える。とにかく楽な人です。なんかしらないけど気付いたら一緒にいる。意識もしない。空気みたいな人です。努力もしなくていい、苦しむ必要もない人です。苗字だってなんだって好きにしなよっていうような人です。いやそんな人いるんかいな。でもある日突然シピが私の前に現れたように、きっと突然現れるんだろう、出会う時は。人と人とが出会って惹かれ合うことは素晴らしいことで、そこには絶対に意味があり学びがあります。だから良いんですよ、今は癒しが必要なんだから。楽しめば良いと思います。へらへら笑って涙を耐えた。

午後は友達とクリスマス会をする。車で拾われて、シピの様子を見に実家に寄ってもらう。シピはごはんを食べるのが下手だ。子猫だから仕方ないんだろうけど、あまりに口の周りと胸元をべたべたにするので試行錯誤している。友達に一瞬だけシピを見せて、もうひとりの友達を拾って私の家に向かう。私はずっとサンタになりたかったので、サンタになった。友達ひとりを無理やり寝かしつけて、想定より本気で眠ったことに声を殺して笑って、枕元にプレゼントを置く。親はすごい。寝たのか寝てないのかわからないし、寝ていたとしても起こさないかとめちゃくちゃ緊張する。人生最初で最後かもしれないサンタの経験。鍋を作って食べて、ケーキを作りたいのでスポンジ生地を拵えて、深夜1時半に焼き上がる。ふたりといるのは、それこそとにかく楽なんだけどな、と思った。

 

12月18日

9時半頃まで眠っていた。ケーキ作りの動画を確認のために見た友達が、クリーム2時間か、できれば一晩寝かしたほうが良いって、と言うので起床即チョコレートを刻む。寝起きドッキリか何かか?クリームを用意して、朝か昼か分からないパンを食べる。寝たり、カレーを買いに行って食べたり、漫画を読んだり、ケーキを飾り付けたり、また寝たりして、とにかく自堕落に過ごした。夜には帰ることになるだろうと思っていたのに、結局晩ごはんとしてまた鍋を食べながら3人でM-1を見る。純粋に幸せだと思う。実家まで送ってもらって、23時頃だったのでシピにミルクだけあげる。部屋に入れば飛び回ってびゃあびゃあと鳴いていたのが、ピヨピヨと鳴くようになった。ミャアと鳴いているつもりなんだろうか。一丁前にねこらしくちょんと座って小首を傾げたりする。爪がのびてきたのか、デニム生地を通り越して脚に引っかかる。ごはんを上手にあげることもそうだけど、爪を切ってやったり、キャリーに入れたり、病気になれば薬を飲ませたり、そういったことを自分一人でできるんだろうかと何度も不安になる。だから猫を飼う踏ん切りが今までつかなかった。正解もないし誰も教えてくれないんだから、やりながら見つけるしかないで、と母は言う。ひたすら元気に飛び回るシピを、今日はケージに入れて眠った。