12月7日

内見である。決戦の日である。緊張している。とりあえず午前中は前日に急遽見つけた部屋の内見を飛び込みの不動産屋に頼んだので、民衆の歌を聞きながら店舗へ向かう。我らと共に戦おう!自由を得るために!途中駅で母と合流。チェーン不動産屋の対応を1時間受け、耐え切れずそろそろ現地に…と促して、部屋が見れないので共用部のみ確認して、ピンと来ないまま終了。駅近だし沿線も良いけど決め手に欠ける。駅ビルで昼食。時間を潰しつつ午後の内見へ。

午後、1軒目の物件はとにかく古かった。不動産の担当が約束時間より5分遅れるというので屋上まで勝手に登って、その景色は良かったのだけど。部屋の中を見ると自分が住む想像はつかない。2軒目。2部屋空いているというので両方見せてもらう。共用部、綺麗。とりあえず一部屋目。かわいい。この時点でほぼ確定である。本命だったもう一部屋へ。入った瞬間ここだな、と思った。さっきよりちょっと広い。ちょっと明るい。フローリングの色が好み。和室の古さが逆に可愛さを演出している。間取りや設備や広さや明るさ、眺望の全部に納得がいって、歩けば歩くほど、観察すればするほど楽しい。自分が生活する想像が溢れ出てわくわくする。母も私も大満足である。前の住民の残置物を見るに、きっと猫を飼っていた女性だろうと推測。流しの下の開き扉にはチャイルドロックが残っていて、ここに猫のご飯を仕舞ってたんだろうか、とか。線路が近いので電車の通過音を確認して、これも全く無問題で、ほぼほぼこの部屋で確定だったけど一応3軒目へ。外見、共用部を見た時点でやっぱさっきの方がいいなと思いつつ、部屋の中をぐるりと確認して、数分後にはさっきの2軒目にします!と宣言する。達成感。久しぶりに心の底から幸せを感じて、穏やかに笑っていた。満たされていた。新たな暮らしが始まるのだ!明日が来れば!

担当と別れた後、母とショッピングモールの喫茶店で休憩。自分のやりたかったことを次々叶えていく私が憎いと母に言われて笑ってしまう。多分この人も、己が遂げられなかった夢や未来を私に託したのだ。私はどうだろう。私の未練や後悔を誰かに託せるだろうか。きっと託せる相手はいないから、チャンスは今世限りで、だから孤独に自分だけで走り切らないといけないのかもしれない、と思っている。ぐずぐずしている時間はないのだ。足を引っ張る人間や、価値の異なる人間や、決断できない人間に構っている暇はない。調子を取り戻しつつある。